認知症患者さんのトイレ問題を解決
2022.04.15
佐藤 由華
sato yuka目次
認知症×排泄問題
おむつフィッターの私が、よく相談を受ける内容に認知症患者さんの排泄問題があります。
認知症患者さんの排泄の問題は、本当に十人十色で過去の経験が当てはまる例が少ない。そのたびに無力さを実感し、そのたびに考え、検証し、成長させていただいているのではないかと思います。
私の今までの経験から、上手くいった例と、上手くいかなかった例をご紹介していきたいなと思いますので、皆さんの参考になれば嬉しいです。
【問題】トイレの場所が分からない
トイレの場所が分からず全然違う場所に来てしまったり、2階にトイレがあるのに1階に下りてしまったり、居室で排泄してしまったり、混乱してしまうケースがあります。
それは、目に見えないものを頭の中で想像できないので起こってしまいます。
私たちはトイレの扉を開けなくても中にトイレがあることを頭の中で想像でき、その記憶を呼び起こすことができます。
しかし認知症患者の方は、それが難しいため【トイレがどこにあるのか分からない】という現象が起こってしまいます。同じような扉が視界に何個もあると余計混乱してしまいます。
どうすれば良いのか?
解決方法は、扉を開けなくてもここがトイレだと分かれば大丈夫です。今いる場所からトイレまでの道のりも分かればよりスムーズにトイレに行くことができます。
簡単な方法はトイレの扉に【トイレ】と書かれた紙を貼り付ける方法です。
そうすると、その紙を読んで「ここはトイレなんだな」と理解することができます。
しかし、気をつけなければならないのが、私は【トイレ】と普段読んでいるので【トイレ】と書いてあれば分かりますが、利用者様の中には普段【トイレ】ではなく【お手洗い】や【便所】【厠】など他の名前で呼んでいる場合もあります。そうしますと、【トイレ】と書かれてあってもピンとこない方もいらっしゃるので、その方が今まで何と呼んでいたのかヒアリングするとより良いです。
また、【トイレ】が何かわかっていても、その文字を読んでもピンとこない方もいらっしゃいます。その場合はトイレの写真やイラスト、ピクトグラムを一緒に書いておくと、より連想しやすいです。
※イラストも、その方が連想する【トイレ】のイラストが、昔使っていた【和式】の方と【トイレをしているピクトグラム】の方や【洋式】の方などバラバラのケースもあるので、なかなか扉の文字とイラストを見ても【トイレ】だと分かりずらいのかなという場合は、イラストを変えてみてください。
トイレまでの道のりは、【→→→トイレ】と矢印と文字やイラストで表すと分かりやすいです。
【問題】パッドをトイレに流してしまう
おむつを着用している方が、パッドをトイレに流してしまいトイレが詰まってしまった…というケースは1年に1回くらいの頻度でご相談があり、後を絶たない問題です。
トイレが詰まってしまい、業者を呼ぶとなるとかなりの金額がかかります。
認知症患者さんは、おむつの中に付けているパッドを【折ったトイレットペーパー】だと勘違いされ、汚れたからトイレに流そうと思い流されるケースがあります。
これは女性の方が多いです。過去の経験から来ているのではないかと思うのですが、女性は予想していなかった生理が来てしまい、予備のナプキンなどが無い場合はトイレットペーパーを折って一先ずその場をしのぐ方が多いのではないかと思います。当然、ナプキンが手に入ったらそのトイレットペーパーはトイレに流します。
少し漏れてしまった方が、これ以上漏れて衣服までに染み込まないように、とりあえずトイレットペーパーを折って下着に付けて、そのまま忘れていてお風呂に入り、デイサービスのお風呂の排水が詰まったなんて話もよく聞きます。
どうすれば良いのか?
この場合は、おむつの中に入っているのはトイレットペーパーではなく【パッド】というものであり、トイレに流すとトイレが詰まってしまうということを伝えなければなりません。
最初にこの問題を相談されたとき、ネットで検索したら「ゴミ箱を設置する」という解決方法が載っており、用意しました。女性の方は上手くいったケースが多かったのですが、男性にはあまり上手くいきませんでした。女性はナプキンはゴミ箱に捨てるという習慣がありますが、男性にとって、これはパッドでパッドはゴミ箱に入れるということが分かりにくかったのではないかと思います。
私は中身の見えないゴミ箱ではなく、ただのビニール袋を用意しました。その中に一つ汚れたパッドを入れておきます。そうすると、パッドをビニール袋の中に入れてくれる方がいらっしゃいました。しかしこれは、臭いの問題があります。ご家族様が一緒のトイレを使用される場合は、この方法しかないのかと悩みました。
その他には、そもそもパッドを使わないという解決方法もあります。
現在、おむつ単体での吸収量は2回分~8回分まで増えました。「ライフリー パッドなしでも安心パンツ」は7回分。「アテント 夜一枚安心パンツ」は8回吸収です。
「もし流してしまったらどうしよう…」という怖さがあり、金銭的な余裕(パッドを使うより、パンツ1枚単体で使う方が金銭的に高くなります)があれば、おむつ1枚での使用もオススメします。
最終的な手段ですが、本人様が「これはパッドでトイレに流してはいけない」ということを理解してもらうことを諦めた場合は、流しても詰らないようにします。カラス避けのネットをトイレに貼って、パッドを流しても下水までいかないようにしたり、便器の上に蓋をするのはどうかと思って、トイレ用の洗面器を買ってみたりしました。
白色で違和感なく設置できるので、どうかなと思ったのですが…
「くっ…トイレの構造的に便座が下ろせないだと…⁉」
トイレを選ぶようです。
【問題】便座に深く座らず、浅く座って床を汚してしまう
トイレの便座に深く腰掛けて排泄すれば、何も問題がないのですがあともう少し深く座ることができず、浅く座ってしまうことで尿がはねてしまい、床を汚してしまうというケースも多くご相談がありました。
どうすれば良いのか?
男性で立ってする場合は床に【足マーク】を貼ると、そこに足を置いて排尿してくれるので上手くいったケースがありました。
しかし、座って排尿される方は、なかなか床を見て座られず、扉に「深く座って」と貼っても扉を見ないので難しいです。
私は普段、トイレに座るときにどこを見ているのだろうかと思いましたが、脱ぐ衣服を見ているんですよね。それと少し前の床を。足を置いてほしい場所に足マークをつけても意味はありませんでしたが、目線が落ちる場所に「一歩下がる」「↓足を乗せる」と書くと効果があったケースがありました。しかし、床に紙を貼るのは躓いて転倒の危険にもなり、ベストな方法ではありませんでした。
少し長いトイレマットにマジックで書いたらどうなんでしょう…?今書いていて思いつきました。
ネットは情報の宝庫
私一人の認知症の方の利用者様の経験は、まだ数十人なので情報量は圧倒的に少ないのですが、私にはネットがあります。
過去、同じような悩みの方がいないか、その人はどのような対策をしているのか、それは上手くいったのか、SNSやホームページなど隅々まで探します。そこで辿り着いた方法をやってみたり、誰もやったことがないが思いついたことをやってみたりして、現在対応させていただいています。
リサーチ力はかなり役に立っています。今の自分にはない情報も、ネットで探せばあちこちに転がっています。それが正しい情報なのか間違いなのかは自身で検証する必要がありますが、何か排泄のことでお困りごとがあれば、ご相談ください。
3日あれば、元カレのSNSのアカウントを特定できるようになった過去の経験が、今役に立っている気がします(気のせい)